山登りを題材にした松本清張の小説「遭難」を読んだ。スリラーめいた、いい出来であった。
ヨコハマの海辺で育った私は、正直言って山には全くいっていいくらい関心がなかったし、今もない。
戦前、井上靖の「氷壁」はいい小説であったと思う。山登りの人の気持もいくらかはわかる気がした。
私の経験はまことに乏しい。小学5年生の時、父と大島三原山に登ったことは、よく覚えている。あの頃三原山はもう自殺の名所になっていた。
あと一度でも行った(登ったとは言は)ない山は、函館山、高尾山、大山(神奈川)、鋸山、乗鞍岳、阿蘇山、鶴見岳、霧島岳、海外ではユングフラオ・ヨッホ(ケーブルカー)ぐらいないもので登山らしい経験は殆どない。
大山は高校生の頃、叔母の家でゴロゴロしていた夏休み、急に推められて近所の山好きの)男と2人で朝早くリュックを担いで出かけた。
長い山道に疲れた私に矢櫃峠でのおにぎり食。午後は大へんに気持ちよかったが、日も暮れて下山をした時はかなり疲労困憊していた。もう誘われても山登りはお断りと思った。
そこに山があるからさというのが山登りの詞だと言うが、私には、山登りで生命を落す人の気持がやっぱりわからない。しかし、人それぞれで、いいのだと思っている。