25・5・3

 アベノミッスは今のところ出だし好調である。株価の上昇に大いに作用し、不動産取引も活発になったという。商店の店舗の売上げも上昇し、ゴールデン・ウィーク中の人の行楽も去年よりは人数も単価も上がっているという。

 新任黒田日銀総裁は就任以来物価の2%上昇を目指して何でも出来ることをやるとマスコミに広言している。

 「何でもやる」というのは、いささか勇み足とならなければ良い。かって私が党の金融制度調査会長をしていた(10数年前)日銀の総裁速水氏にインフレ・ターゲットの設定を薦めた折に眼の前で手を振ってとんでもないとい面持ちで反対した。当時の日銀の役員の中では副総裁の岩田一政氏だけが前向きであったと云う。

 私が平成2年経企庁長官の際。予算委員会で野党の質問にたいして橋本蔵相が先を越し手を挙げ、日本経済の先行きは何等心配はない、と言い切った後で立った私は、景気の先行きに不安があり、既に下り坂にかかっているので、何等かの対策が必要であると答え、野党委員から内閣の意見が割れていると野次が飛んだことを時に思い出す。橋本さんは後首相になった人だが、妙に自信のある言辞を弄するところがあった。

 それはともあれ、どうも現在物価上昇率が2%に達するか、どうかに議論がからまっているが、何も物価を上げることが目標である訳ではない。物価だけが上がって経済の実体が少しも良くならなければ、国民にとっては、インフレ・ターゲットなるものは無用の政策であると言わざるをえない。

 物価の上昇が生活費の上昇だけとなっては何の良いことはない。それが収入の増、所得の増などにと繋がって行かなければ、何のメリットもない。安倍首相は企業の賃金の引上げを経済界に要請した。それは結構なことである。が、それが政府側の施策に連結しなければ人の褌で角力をとるようになって戴けない。

 やはり、即効性のある財政上の措置を講じ、実行しなければなるまい。

 切角、気運が出て来たところだから、あとは政治的決断をもって、「やることは何でもやる」べきでないか。