25.3.17

横光利一に同名の小説がある。新感覚派と言われた戦前の作家横光は当時学生であったわれわれの間で広く読まれた作家の一人である。映画の旅愁は未完に終わったが、巴里を舞台とした横光の小説を私が読んだのは昭和も十五年頃ではなかったか、と思う。

ウィリアム・ディターレ監督の旅愁は若い女性ピアニストがナポリに不時着した飛行機で乗り合わせたニューヨークの技師と愛し合うことになり、男の子一人をなしている夫人とかねて離婚を考えている彼と一緒に乗る予定をしていた飛行機が墜落して死亡したと報じられたのを奇禍として結婚を誓うが、夫人と子供のことを考えたピアニストはやはり男に分かれを告げるという物語である。

ふんだんにパリ、ローマなどの美しい風景が背景に出てくる、ハリウッド物にしては素直な心にしみる映画である。



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