25・2・22

 松本清張の作、久しぶりに読んだ。それとは記してないが、安宅産業が破産したあの有名な事件がモデルになっていることを読み始めて気がついた。

 その業界のことをもっとも良く知っている筈の上杉二郎なる江坂産業の常務、当時の江坂アメリカの社長がニューファウンドランドの壮大な石油製油所の建設をもくろむNRCのアルバート・サッシンの計画に乗せられて最後にドンデン返しで破産するという悲しい物語である。江坂産業のオーナーの一生をかけて集めた朝鮮と中国の古陶磁器のコレクションは余りにも有名である、と言われていた。

 清張らしい確かな作品である。出身が鳥取県の西部とあって生前何回か酒席をともにした思い出が懐かしいが、これだけの社会派小説家はその後例を見ない。