24.10.28
私は、人から色紙を求められた時によく「一日生涯」という四文字を書く。その心は、「今日の一日を生涯と思って悔いない努力をする」ということである。
学徒出陣で中支の戦場で何度も死ぬような目に遭い、北朝鮮に軍が移駐してやっと助かったと思ったら、終戦でソ連に連れていかれ、戦犯容疑の取り調べで監獄に4ヶ月も閉じ込められたり、酷寒の冬を三度送る羽目になった。
その間、私は、この一日も再び帰ってくることのない一日であり、明日死んでも後悔しないような一日を送らなければならないと思った。その気持が「一日生涯」である。
そんな立派な事を言っても、お前のその後の生き方は、そうなっているか、と問われれば、その通りですと答える厚かましさは持っていない。が、言葉は決して忘れていない。「一日生涯」。それは変わらない気持である。
「浜までは海女も蓑着る時雨かな」江戸時代千石船を五艘持っていたという財産を風流でみななくして出家した播州瓢水の句である。
あと何年生きるか、と思うとこの句も思い出す。