24・10・24

 五木寛之のラジオ時代の名ディレクター高円寺竜三の物語である。全く自己流の仕方で演歌の演出をする彼が近代的な組織的な仕方で歌手を売り出そうとするライヴァルの黒沢に敗北を喫して、一切をなげ捨てて凾館の舎に引退する。

 釣と小さなバーでのコップ酒の毎日であったが、頼まれて若い歌手を売り出すことに再び青春の血を甦らせ、最後の力をふり絞って成功したが、彼はそこで「旅の終りに見る夢は、かー」と小さく呟いて、再び凾館の街の灯に飲まれて行く、という物語。

 久しぶりに読んだ五木の作品であったが、彼の作品のなかでも、よく書けている一作ではないか、と思う。