24・9・16

 曽根綾子の楽しい力作・上下というか、二卷を読んだ。明らかに夏目漱石の「吾輩は猫である」をもじった作品であるが、あれ程の高等遊民みたいな人達が出入りする家ではなく、作家夫婦の、かなり庶民的な家に住むつくネコの見た家庭の内の景色の物語である。彼女が主人公であって、又、これを書いているネコも彼女の分身に近いこと夏目の作と同巧のところがある。

 対象に優しく、又時につき放したところがある。「後は野となれ、山となれ」が彼女のシキシに書く文句と言うが、死ぬことだけは確かな生き物だが、その心境にはなかなかなれないところが人間であろうか。