24・8・20

 官界は学閥社会であると言われる。確かに東大その他官学出身者がキャリアとして多い。現在でもそうだが、昔はもっと多かった。

 私は昭和179月に学徒出陣として6ヶ月繰上げ卒で10月大蔵省に入ったが、戦時中とて戦死を見込んで多く採用した27名のうち、東大卒が22名、京大卒が4名、一橋卒が1名であった。なお、その時、省内の局長クラス以上のボストが13あったが、全員東大卒で、又、全員一高卒であった。

 それで、東大卒であるか、ないかの意議は却って乏しく、又、取扱い上差別はなかったと思う。もっとも、東大卒以外の人達は意誠していたかも知れない。

 戦前は私立大学卒で局長以上のポストについた人は恐らく極めて少なかったと思うが、戦後は少しある。

 毎年、昔は高文合格者戦後は国家公務員上級職試験の合格者はいわゆるキャリアとして採用され、本省課長クラスまでは頭を並べて一斉に昇進をするという慣行になっていた。民間では、例えば大銀行では何百人という大卒を採用するが、このような区別は存在せず、年の経過とともに幹部になれる人達が選ばれ残って行く形であった。

 それで、私が事務次官になった時に、新規大蔵省採用者の数を100名程度(それまで毎年20名足らずの5倍)に増員し、あとは実績に応じ、実力をみて、幹部候補生を残して行く方がいい、と思って提案したところ、官房長や秘書課長が猛反対をした。理由は、従来よりも、そんなに沢山採用したら、在職中のポストが足らずに困るばかりか、退職時に就職先を見つけるのが困難だから、ということであった。

 私は、それを聞いて、これから人を採用しようとする時に、退職後の行先きのことを心配するなんて本末転倒していると思ったので、新人採用者数の増加にこだわったが、100人が50人になり、結局27名に減って了った。

 今でも私は、自説が良いと思っている。もっとも大銀行のようなところも数百名大卒を採用し、大学による区別はないようであるが、実際は割とはっきりしているところがあって、招来重役になる人と支店長止まりになる人と内々差別が行われている、と聞いている。

 東大卒は官界に強く、早大卒は出版・マスコミ・政界・法曹界に、慶応卒は金融界など財界に強いなどの傾向はあるし、それぞれの業界において特定の大学卒が多く、いいポストについているという事実は否定し難く、それをしも学閥と言えば言えるかもしれない。

 しかし、諸外国はどうか、というと確かに大学でも米国で言えばアイビー・リーグの8大学出身者とそうでないものとの取扱いは全然違うという。イギリスやフランスなどでも、もっと出身校如何が問題とされる、という。

 しかし、それよりも欧米では、大学卒と大学院卒とに大きな差をつける傾向があり、学閥というよりも、学歴が物を言う、日本以上の学歴社会であると言われている。事実一流企業の経営陣の大半が修士号以上の学位を取得していると言う。

 日本でも、グローバル化が進む今日、企業は生き残りをかけて優秀な人材を世界中から確保しなければならなくなっているので、結果として、一流企業になればなるほど出身大学はばらつくようになっている。

 リーマンショック後の日本の偏差値上位校を含む就職難を考えると、日本も先進国型の学歴社会になるのではないか、と言われている(国際政治学博士、安井裕司氏のブログ参照)。