24・7・12

 山田五十鈴さんが79日に亡くなった。大正6年生まれで95才、私より2才上である。

 とにかく戦後舞台の三大女優と言えば、彼女に水谷八重子(初代)と杉村春子だと言われている。私は、三人の舞台を見ているが、何でもこなせて、三味線などの芸も達者で、色気のあるのは山田五十鈴さんではないか、と思っている。

 このところDVDでモノクロ時代を含めて彼女の映画を何本も見ているが、若い頃の美しさに憎らしいほどの修練が加わって、とにかく飽きさせず見せるところは流石だ、と思う。


 晩年10年程世間からは離れていたようであるが、人が訪ねてもうずくまっているように元気もない彼女がカメラを向けるとビックリするようにシャンとした姿でポーズをとった、という話を聞いたが、それでこそ、もと女優の振舞いだ、と感じた。

 今、私は、青山斎場での葬儀から戻って来た。式の始まる前、東宝の人の案内で棺の中に横たわる彼女の姿を拜んだが、本当に綺麗な顔で眠るがごとくであった。手を合わせて御冥福を祈ったが、大正会で御一諸したことなど思い出して、悲しかった。