24・6・9
原子力安全行政を一元化する新組織へ経済産業省などから移る全職員を出身省庁に戻さない「ノーリターン・ルール」を適用する方針で与党三党が大筋合意したと6月10日の日経(朝刊)は報じている。
何だ、こんな詰らないことを取り極めるのか、というのが率直な私の感想である。
そもそも、かつて行政管理庁、経済企画庁、環境庁など他省庁からの出向者を多く抱えるところについて、この様な議論があった。というのは、各省庁からの出向者は、どうしても親元の省庁へ戻りたいものだから、事柄を決するに当って、出身省庁にとっての利害をも視野に容れざるえず、妥当な判断をし難くなる面があるから、それを予防するためには、例えば審議官以上の職については、出向者は出身省庁に戻さない、ことにしたらよい、という考え方であった。
私は、そういう事情はわからなくもない、と思うものの、他面、出向者は出身省庁に戻さない、とすることの弊害も考えなくてはならない、と思っている。普通は、出向者はもともとその出身省庁でずっと働くことを希望していたのだから、帰さない、ということになると、どうしても出たがらない、省庁も優秀な人材を送りたがらない、というようになる。それがいいかである。
外国では、省庁間のみならず、省庁と民間との人事交流を大幅に認めているところがある。その交流によって、行政の在り方についての理解が深まるし、又、民間の事業の内容について、より実態を把握することも可能となる。
又、他省庁に出向したからといって、出身省庁の方ばかり向いて仕事をする、というようなことは短い私の経験からいってもないし、又、出身省庁の考え方を反映さすことが、必ずしも弊害があるとは言えず、それなりのメリットもある。
従って、私は、今回の三党合意は妥当ではないと思うので、再検討を望んでいる。