24・5・28

 曽野綾子の「堕落と文学」と「朝はアフリカの歓び」という著者から贈られて来た近著2冊を続けて読んだ。

 普段は決して見せてはいけない作家の日常、仕事場を作家生活50年を過ぎ、人生の総決算として初めて綴ったという(帯)前者と「貧しく、汚職にまみれ、失職者にあふれた地にも、すばらしく澄んだ夜明けがあった(帯)という後者。

 いずれも、私にはすっと心に屈くものをもった優れたエッセイである。

 1昨日夕監名会という名画鑑賞会で委員長でもある彼女の御夫君三浦朱門氏と久しぶりに会った。

 彼女の著書の随所に出てくる御夫君の言動は大正生れの仲間としていつも強い同感を持って承知していたが、実物も話好きの好オールド・ボーイである。

 彼女の著書をこの2年でこれを含む17冊読んだ。

 私ども過去に歩いて来た世界をどうしても離れ難く、何かにつれて拘束を覚えるものと違って、思ったことをそのまゝ文字にすることの出来る、作家冥利に尽きる彼女の生き方を羨ましいと思うことしきりである。