24・5・22
松岡譲の著書である。夏目一家と最も近い、というより一家の1人となった著者の漱石像であるから、子供の頃から漱石の著作に親しんで来た私には期待された本で、その期待を裏切らないものがあった。
と言いたいが、少々身びいきが過ぎているところがあって、そこは割り引いて見なければならないと思った。
小説など縁遠い父が本箱に並べていたのは漱石全集(初版本)と菊池寛全集であって、この2人の全集を小学生の5年生頃から読み始めた。
菊池寛の「真珠夫人」を読んでいて、父にまだ早い、と取り上げられたことをよく覚えている。それでも中学校を終える頃には全集全部を読んだように思う。
父が漱石全集を買ったのはよくわからないが、菊池寛は東京高師の英文科で同級、寄宿舎も同室であったよしみである、と父から聞いた。
ともあれ、全集のあったせいもあってか、2人の作品は私は今でも好きである。今読んでも、違和感がないところが、優れている、と言えようか。