24.02.10

半藤一利の「山本五十六」は新聞広告で見て早速買い求めて一読した。「誰よりも、開戦に反対した男がいた」と表紙に書かれているが、それが山本五十六であるという。陸軍の連中よりも遙かに外国の軍隊の力も知っている海軍の首脳、なかでも最も強く開戦に反対していたとは、かねていろいろ書き物から承知していたが、これ程までに行動をもって反対の意を示していたとは知らなかった。

連合軍、特に米国の軍需産業における桁外れの力を知っていた彼は、長い戦いとなれば絶対に負けると信じていたので、力を尽くして開戦に反対していたが、もし仮に開戦止むなしと廟議が決した場合は、緒戦で徹底的に相手を叩いて、早期の停戦に持ち込むしか、日本の生きる道はないと確信を持っていた。

然し、神州不滅といい、神がかり的に日本の勝利を盲信している国民の大勢には叶わず、ついにミッドウェー海戦における大敗後つるべ落としに沈む秋の日のように続くみじめな敗戦の中から最後に再起をかけた「い」号作戦の遂行中、日本側の暗号を解読した米軍機によってブーゲンビル島で空しく散った山本五十六の姿は痛恨の念をもって想起せざるをえない。

後半、も少し書いて欲しかったが、久しぶりにまともなドキュメンタリーの小説に接して感動した。

敵を知り、味方を知る―戦いに勝つ鉄則であることと改めて知るとともに負ける戦いの無意味さを今更ながらしみじみと味わった。