続けざまに読む、学生の頃馴染んだ作家のものとどこか戦後、それもここ10年か20年前からはやった作家のものとは矢張り時代の差を感じないわけにはいかない。どちらがうまい下手の問題ではない、要するに読んでいる層が違うような思いである。学殖は落ちている気はするが、文章、とくに会話は断然若い作家の方がうまい。
つい三日前、小津監督の「麦秋」をDVDで見た。名監督と言われ小津の作品であるが、正直に言って時々退屈して、半ば遊びながら見ていた、画面に神経の行き屈いているとは充分感じるが、楷書体の字を眺める思いで、これでは若い人にはまどろかしくて退屈するかも知れない、と思った。逆に若い人の作品に接して、われわれもくい足りなさ、底の浅さを痛感するのである。