24.1.30
一昨年から浅田次郎の作品を読み始めてかれこれ二十冊は読んだ。このところ又続けて三冊読んだ。「霧笛荘夜話」、「見知らぬ妻へ」と「椿山課長の七日間」である。どれもこれも面白かった。かつて自衛隊員であったことを含めて作者の経て来た有為転変の生活の経験が下敷きにあるかと思うが、とにかく一気に読ませる筆力は大したものである。
とくに「椿山課長の七日間」は亡くなった人達が現世と来世の中間にある中陰の世界でスピリッツ・アライバル・センター(通称SACと呼ばれている役所)で、反省のボタンを押せばだれでも極楽に行けるのに、この世に未練を残して死んでも死に切れない人達(その一人が椿山課長)が死後七日間(実質三日間)は願いにより姿を変えて現世に逆送され、携帯電話を始め何でも入っている「よみがえりキャディーバッグ」を持ちいろいろ会いたい人に会ってそれとなく別れを告げるという、奇想天外な筋の物語である。比類のない孤独とそこから前を向いて立ち上がろうとする人間の姿に涙せざるをえない。佳作