24.1.8

寂聴さんが瀬戸内の頃書いた自叙伝的小説である。いたいけな子供を棄てて不倫の恋に走るなど数々の男遍歴のある彼女が出家するに至る半生を小説に借りて物した佳い作品である。

誰かが小説家の第一歩は物をよく見ることだと言っていたが、同時に筆を惜しんで描写することが大事だと思う。自分の事をいわば第三者の眼で見てつき放しながら書くことは容易でないが、彼女はそれをこの小説でも見事に果している。