23・10・22

 懐しい映画である。戦前(昭和15年)三上於菟吉が朝日新聞に連載した同名の小説を原作として市川崑の監督で作られた大映の作品である。

 当時、毎日待ちこがれるようにして読んだ小説で、映画では女形雪之丞と俠盗闇太郎との二役の長谷川一夫が主役で、冤罪で父親を殺された雪之丞が大奥で将軍の寵愛を受けている娘の父親三斎ほかの敵(かたき)の面々を自ら手を下さずして殺して行くという物語である。

 長谷川の二役も見事だが、闇の仲間の女(山本富士子)も顔に似合わず歯切れのよい江戸弁でたんかを切って、まことに美しい。将軍寵愛の女、若尾文子も良い。