23・10・15

 村田英雄の同名の歌でも知られている稲垣浩監督の名作である。丁度、高峰秀子の「わたしの渡生日記」(上・下)を読んでいたところで、彼女の本当に飾らない、あけすけな一代記に感じ入っていたので、手元に買ってあったこのDVDを見たくなったのである。

 「小倉生まれの玄海育ち」と歌の文句にもある北九州は小倉の人力車夫富島松五郎がある日木から落ちて怪我をした少年を助ける。その少年は陸軍大尉吉岡(茶川比呂志)の一粒種であった。これをきっかけに親しく吉岡家に出入りするようになった彼は風邪で急逝した吉岡の遺された母子の力となっていたが、次第に未亡人(高峰秀子)に強い思幕の念を寄せる。しかし、身分を思い自らを羞じてある日深酔の後、雪の中で倒れて死ぬ。母子のために作られた彼の500円の預金通帳を見て未亡人が激しく鳴咽するところで幕という悲恋物語である。三船の祇園太鼓の乱れ打ちもよかったし、秀子も役柄を良く出している。

 ちなみに稲垣監督の家は成城で私の隣家であり、秀子の夫君松山善三は横浜の根岸小学校の後輩である。縁と言うべきか。