23・10・2

 水上勉の良い作品であった。私はとっても懐かしく、又、彼が修行僧として過し、又、生涯好んでいた京都の街が舞台である。丹波の生れでたまたま知り合って引かれあう女二人を中心とした女の生き方を描いている。昭和六十年に買ってつんでおいた一冊を一気に読んだ。

 人が会えて別れるのが世の中ながら何かしら引かれあう(えにし)は美しくも哀れである。頑固に生き抜いて来た男やもめの老学者と男二人を渡ってとうふ店を委された女主人との愛の果は未完で終わっている。