23・7・22

 716日学士会館で監名会主催の映画鑑賞会が開かれた。「巴里の屋根の下」で、1930年(昭和5年)上映のトービスの映画である。「巴里祭」、「自由を我等に」なども撮したフランソア・ベルナールで主演はアルベール・プレジアンであった。

 巴里のほんとの下町の良さをふんだんに描いた、しがない歌唱いの主人公の切ない恋物語を主題とした往年の名画である。私は、中学2年生の時に国語担当の犬養孝先生(萬葉学者として有名で後に阪大教授などを歴任し、文化功労者にも推された)が、何かの折に教室でこの映画の話をし、主題歌を小声で披露してくれたことが強く印象として遺っていた。

 その歌やら「巴里祭」の歌やらを原語で唱いたく、又、モーバッサンの小説を原文で読みたいと思って、アテネフランセの夜学に暫らく通ったのは一高時代であった。先生はロージュマルタン・デュガールのチボーの家の人々などを訳した山内義雄氏であった。

 この映画を初めて見たのはその中学生の頃であったが、それから23回は見たと思う。

 この映画を輸入した映画会社東和の川喜多かしこ夫人に初めて会ったのは1955年(昭和30年)ロンドンで大使主催のテームズ河の花見の船上であった。

 数々の名画の上映に取り組んでいる監名会(竹下景子事務局長)の107本目の上映であった。上映の後、三浦朱門氏と私と映画についての対談を四十分ほど続けた。朱門氏の解説は興味深く印象に残るいい会となった。

 監名会がこれからも貴重な役割を続けて行けるように有志諸君の御支援を願いたいと思っている。