23・6・11
作者宮本輝のものはまだ読んだことはなかった。知人から贈られていたが20年も棚に載せられたまゝであった。
2冊の上を読み終えた。戸倉という弁護士とかほりという若い女社長のいわば恋物語が後の方に出てくる。舞台は北京、しかも北京飯店である。戦争中、北支方面軍司令部経理部の主計将校で勤務した北京は本当に懐かしい街で、戦後何回か訪ねたた時もやはり例えば天壇の姿を遠く見ただけでも昔が甦えってくる思いであった。
去年王府井大街を二度歩いた。様変わりであっても昔の姿はどこかに遺っている。この小説の主人公達の宿舎の北京飯店は以前より随分大きくなったが、戦前梅原龍三郎さんがその何階かの窓から描いた紫禁城の瓦の色は今も変らない。90になってもウイスキーの水割りのグラスを離さない氏の思い出話を何回もお聞きした20年も昔が懐しい。
ともあれ、戸倉とかほりの間がどうなって行くにか下巻が楽しみである。