23・6・5
家内が理事をしている牧野植物園でオランダデーが開かれ、一緒に出席した。駐日オランダ大使も出席していた。食事の時は真向いだったので、いろいろな話をして楽しかった。元防衛庁長官の中谷元氏や高知県知事も同席であった。知事は珍しく大蔵省(今の財務省)出身で、私の後輩であった。
オランダは長崎の出島で厳しい鎖国の間で交渉を許されたただ1つの国であって、医学その他学術の面でもわが国に大きな影響を与えた国である。
ビール、ガラス、ゴム、コップ、ソーダ、ランドセル・・・・・など、多くの言葉がオランダからきているが、とくに医術については出島で医学を学んだものが蘭医として貴重な存在とされた。菊池寛の解体新書という小品が杉田玄白、前野良沢などと原語の解釈に悩みに悩んだ末「うず高し」と訳出できたと喜び合ったことを記していた。
その解体新書も植物園内の牧野文庫で見せて貰って感慨が深かった。この文庫は牧野富太郎博士が蒐集された4万5000冊にもなる蔵書を保管しているもので、完全に空調された書庫の中に収納され、係官が解体新書の他いくつかの資料を見せてくれたが、手袋をはめて取り扱われる博士自筆の植物図や印刷のゲラなどにその鏤骨の努力に改めて感歎せざるをえなかった。ねずみの手を三本束ねて作った筆で恐るべき精密さで描いている。