23.5.28

 終戦の日、昭和二十年八月十五日に起きたことを克明に綴った貴重な一冊である。(著者半藤一利)玉音放送の録音盤が終戦に反対する青年将校たちの襲撃によって奪取されないように身体を張って宮内庁の役人や放送局の職員が行動したことは、話は聞いていたが、初めて詳細に知りえた。

 敗戦の責を負って自害をした阿南陸相の最後も立派であって、結局それが反乱部隊の蜂起を鎮静せしめた大きな原因となったと筆者は見ている。

 それにしても録音盤の奪取に動いた歩兵第一連隊第一大隊第一中隊は昭和十八年の秋、私などの経理部幹部候補生が集合教育を受けるために在籍していたところであって、感慨を禁じえない。当時はそんなことは全く知らなかった。頭号連隊の頭号中隊として光栄ある部隊だと誇らしげに教育されたものである。