23・5・7

 クールビズが不思議に思われなくなって何年経つであろうか。たしかに暑くて湿気の多い日本の夏には適したスタイルである。大勢渡れば恐くないという言葉があるが、12人では目立って尻ごみするような恰好でも、それが流行のようになって了えば何とも思わなくなる。ジーンズの着始めなんて、そのいい例である。そうなる前はあんな乞食みたいなズボンを誰が穿いたであろうか。

 もっとも昔は旧制高校の生徒などは弊衣被帽、高下駄を鳴らして歩いたものだが、私達の頃はもうわざとらしい破帽や高下駄は嫌がって、脚下はゴム裏の草履で、時に踵が磨り切れたりすると爪先立ちで歩いていた。もっともそれがある意味で流行であったのかも知れなかったが、マントだけは変わらず着ていた。

 さて、クールビズだが、戦後20年代は役所でも夏は半袖シャツを着ていた。

 昭和29年に東南アジアに出張を命じられた私は香港で半袖のYシャツにネクタイを締めている人の多いのに注目し、2枚ほどデパートで求めて帰った。日本ではまだ流行っていなかった。デパートに注文して作って貰ったが、何だかいい恰好ではなかったので、調べてみると、Yシャツの袖をただ半分カットしたようなもので、袖ぐりがYシャツのもので妙に広く、香港シャツとは違っていた。それで、早速現物をもって再びデパートに行ったが、型紙から作らなければいけないと言われた。だから、私が、今はそんな言葉はなくなったと思うが、香港シャツの着始めかな、と思ったりしている。

 今度の大災害にかえりみて、さらに省エネが薦められ、新しいクールビズ、多分ネクタイを締めず、Yシャツでもない、普通のカッターシャツかTシャツが流行るのかも知れない。ゴルフ場などで、Tシャツなど襟のないものを着ないようにしているところが多いが、まあ、せめて襟のあるものを着て欲しいと思う。

 ついでに一言言うと、ジーンズの膝こぞあたりの破れているものをよく見かけるが、あれはどういう趣味か、私は気に入らない。そこまですることはない気がするのである。