23.4.21
久しぶりに水上勉氏のものを読む。エッセイだ。大正八年、同年の生れ。東京の家も成城で近く。銀座で知り合って、親しくしていた。成城や軽井沢で昔に盃を酌み交した日々はずっと昔のことになった。軽井沢から引っ越した先、小諸の付近の家で骨壷も焼いていた。その家も、亡くなって数日後に訪ねた。
この本は、彼の好きな若狭の話であるが、大飯町の大原子炉は大丈夫だと言うけれど、本当にそうか、「チェルノブイリの恐怖と悲しみ」はそんな悲劇は本当にないのか、と丸で今日の日の福島原発の惨事を暗予期していたような文章に打たれる思いであった。作家の鋭い感覚がそう思わせたのであろうか。一気に読んだ。杞憂が本物になった。
相沢さん、というささやくような懐しい声が耳元で聞えるような気がする。