23・3・27

 このような大災害の直ぐ後にこういうことを言うのも何かはばかられる気がするが、日本は過去において大災害の後、奇跡的に立ち上がって以前よりも繁栄を取り戻して来たことを想起する。

 関東大震災、戦災、阪神淡路地震など数々の前例がある。戦後、やゝ不謹慎な言い方になるが、関西で言えば、戦災で壊滅的な打撃を受けた大阪や神戸が焼けなかった京都、奈良、大津などよりも急速に復興を果したことは、戦後間もなく関西に赴任を命じられた私の実感であった。

 とは言うものの、大災害に遭って却って良かったなど言えたものではなく、そのような発想はとんでもない間違いで、このような天変地異、はたまたま人災は全くないのがよいにきまっている。

 ただ言いたいのは、決して諦めてはいけないということである。戦後3年ソ連抑留から解放されて故国の土を踏み、眼にしたのは焦土からやっと立ち上がりかけた東京の姿であった。二度と戦前の栄光を取り戻すことができないのかな、と絶望の思いで眺めたことは忘れられない。

 それがどうだろう。着々と復興、発展の途についた日本は雌伏四十有余年世界第二の経済大国にまで成ったではないか。

 日本人の英智、努力、勤勉などとあらゆる美点が発揮されてきた結果とは言え、この成果の記憶は喪ってはならない。この災害に際して、ボランティアの人々の協力が日々テレビなどで伝えられているが、その暖かい心に日本の良さは未だ失われていない、という思いをしみじみと感じ、涙のこぼれる思いである。