23・3・7

 毎日曜日日経新聞に掲載されている瀬戸内寂聴さんの人物評論もこの36日で171回となった。いつも楽しみにして、日経ではまずここを見ることにしている。今回は「吉屋信子の器の大きさ」の見出しで、いわゆる通俗作家として大いに売れた彼女の姿をいつものようにずばりと描いている。

 対象となる人の本質を、つき放したように冷いが、しかしどことなく暖か味のある、いたわりの心の見えるいつもの文章である。

 吉屋信子の書いたものは戦前少女倶楽部や主婦の友などで私の家でもよく眼にしていたが、「女の友情」「夫の貞操」「安宅家の人々」なども読んだ。「徳川の夫人たち」の舞台には家内の司葉子も出演していた。

 瀬戸内さんにはかなり前彼女の原作の舞台に葉子が出演し、通し稽古の折、客席で御挨拶をしたことがある。葉子が村長をしている岐阜県明智町の大正村を中心として催される大正百年記念事業の一環として彼女に私から講演をお願いしたところ、大正生れの1人として喜んでお受けするという言葉を頂き皆さんと喜んでいた。しかし、その後腰を痛められてその計画は見送らざるをえなくなったのは、大へんに残念であった。もう回復されているようであるが、再度講演をお願いしたいと思っている。この講演会のことを発表し、入場希望者を募ったところ5千人を越える葉書が殺到し、嬉しい悲鳴を挙げたところを見ても、いかに期待が大きいか、わかる気がした。