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 池宮彰一郎の表題の本(上・下 角川書店)を読んだ。副題に「鍵屋の辻」とあるように天下三大仇討の一つ伊賀上野で寛永11116日行なわれた仇討をめぐる物語である。

 渡部源太夫を暗討同然に惨殺した河合又五郎を義兄荒木又右衛門が苦節五年鍵屋の辻で見事仇討をしたのである。当初は一箇の怨恨による刃傷事件に過ぎなかったが、河合又五郎が八万旗といわれた徳川本家の旗本の陣営に駆け込んだことから、旗本対外様雄藩である池田家との間の侍の意地をかけた確執となったのである。

 詳しい紹介は省くが、何故こんな仇討が天下三大仇討の一つとなったのか、よくわからなかったが、この本を読んで、その背景がよくわかった。興味をお持ちの方は御一読をお推めする。上下664頁の大著である。

 ちなみに、天下三大仇討とは富士の裾野での曽我兄弟による工藤佑経への仇討、浅野家浪人による吉良上野介の仇討とこの鍵屋の辻の仇討であって、一富士、二鷹、三茄子の古諺はこの3つの仇討を指して云うと聞いた。茄子は「いがを越えて實る」という、つまり「伊賀越え」が伊賀上野での仇討にかけているという。