23・2・27

 海外では路面電車が都市交通の担い手として復活し、新しい交通システム「LRT」(ライトレール・トランジット)として導入が進んでいるという。

 地球環境問題への対応、増加する自動車による交通渋滞の緩和、郊外開発による中心市街地の衰退の防止、増加する高齢者の移動手段の確保、高いデザイン性での街のシンボルの創出など、いろいろ目的はあるが、ともかく一度は廃止された路面電車の価値を見直そうという動きが海外では高まっている。

 世界で現在路面電車が走っているのは日本を含む48ヶ国、三四34都市に上っている。なかでもドイツの路線の延長は3000km近くもある。ドイツでは小回りの利く路面電車の良さを見捨てず、車両の改良、自動車交通との分離、使いやすい運賃システムの開発により都市交通の機能を高め、LRTの基礎をつくったと言われている。

 1978年(昭和53年)カナダのエドモントンで初めてLRTが開業して以来、過去に路面電車を廃止した都市を含め、LRTの導入が相次いでいる。今世紀に入り、欧米では56都市に導入が行われているが、日本では2006年(平成18年)富山市に初めて本格的なLRT二路線が誕生したのみである。

 そもそも、日本では1895年(明治28年)京都市で路面電車(堀河線)が始まって以来、都市交通の要であったが、ピークの1932年(昭和7年)には67都市で運行、路線延長は1479kmに及んでいた。その後自動車の急増で、中心市街地は渋滞が甚だしく、主役はバス、地下鉄にとって代られ次々に廃止の浮き日に遭い、現在は17都市で238kmが運行されているに過ぎない。

 私は、大学を出るまで横浜、東京で暮らして来たので、随分路面電車にはお世話になっていた。小中学生の時は、横浜の市電で通学をしていたし、高校、大学は東京、勤めもあらかた東京だったので、都電を使用することもあった。

 私が電車で通学している頃は市電、都電は167銭で何回でも乗り換えが出来きし、町の隅から隅まで走ったので、大へんに便利であった。

 いずれにしても、先に述べたような理由によって、世界的にも路面電車が見直されている。高速鉄道の建設が相次いでいるのと機を一にしているようである。

 電気で動くことから空気を汚さず、走行音も静か、車両も大きく、デザインもスマート、バリアフリーでいろいろな利点があるだけに日本でもLRTの導入が期待されている。現下の経済状況や地方自治体の財政状況を間が考えると、いろいろ難点はあると思うが、長い眼で見ての検討は少なくとも必要ではないか。

 (213日付東京新聞・朝のデータを借用した)