23・2・26

思い立ってドストイェフスキィの「罪と罰」を読み始めた。筑摩書房の世界文学全集の一巻で、小沼文彦の訳である。

 私どもの学生の頃(昭和10年代)は好んでロシア文学に親しんでいた。私もトルストイ、ツルゲェーニェフ、チェーホフ、ゴーリキィ、ゴーゴリの作品は殆んど全部読んでいたし、レールモントフ、プーシキン、ショーロホフなどのものもかなり読んでいた。

 しかし、どういうわけかドストイェフスキィのものは「罪と罰」を英訳(Crime and Punishment)で読んだだけで、「白痴」、「カラマーゾフの兄弟」、「二重人格」などは読まなかった。

 大部の本なので恐れをなしていたわけではない。トルストイの「戦争と平和」や「アンナカレーニナ」などぶ厚いものもむさぼるように読んでいた。ドストイェフスキィの罪と罰を読んで、何となく肌に合わない気がしたし、あまりにも陰惨な場面の記述が多かったのからかもしれない。もっともその英訳の本はどうも要旨を記しただけのものだったような気がする。

 前から「罪と罰」や「カラマーゾフの兄弟」、トーマス・マンの「魔の山」、ロマン・ローランの「ジアン・クリフトフ」など読み残した大物を是非読んでみようと思っているが、果して読み切れるかな、とも思っている。

 やはり、歴史に残る名著は充実をしていると思いつつ罪と罰も読んで行こう。