エジプトの動乱は中東などの諸国に波及しつつある。エジプトよりも長いカダフィの独裁体制の続いているリビアも例外ではなく、デモの鎮圧で既に百人近い死者が出ているという。
一昨年カイロへ旅行で出かけた時は、街が自動車の洪水となっているのに驚いたが、一寸街を外れれば、バスに鈴なりのように人がぶら下って走っているのをよく見た。一日2ドル以下で生活している人が人口の四割を越えると新聞で見たが、そのようななかで大統領が何兆円も外国に預金を持っていると知れたら、暴動が起きても不思議でない気がする。
組織的な民衆の動きではなかったが、枯草に火をつけたような勢いでデモは拡大をして、軍も手出しはできないで、独裁政権は短時間でひっくり返った。パリ・コンミューンもかくやと思われる状態ではなかったか。
リビアへは十年近く前に出かけた。世界有数の石油の埋蔵量を誇る国であったが、カダフィの軍政下20年に余る経済の停滞でインフラ整備が急がされる状態にあった。イタリア始め地中海に面する諸国とは当然関係が深かったが、欧米各国の石油利権などをめぐる激しい攻勢の中、日本は遠隔の地にあるだけに万事出おくれの状態であった。
カダフィ大佐の後継者と目されるサイフ・アル・イスラム・カダフィの来日の際、縁あって要人との会談などでお世話をしたこともあって経済委員会のアドヴァイザーにもなっていた。石油採掘などの開発案件などにもかかわっていた。中央銀行の建物の建替えについて黒川紀章事務所を推せんし、黒川氏はデザインを携えて一緒にトリポリに出かけようと楽しみにしていたのに彼の死に遭い、又、建替計画自体も怪しくなった。
ああいう独裁の国は一夜にして計画が変ったり、大臣も替ったりするし、省がなくなったりする。
リビアにはローマの立派な遺跡が三ヶ所もあって、その調査も急がされているが、この面ではお世話して日本もタッチしている。
ともあれ、リビアの平均所得は高い方であるが、それでも40年も続いた独裁体制には、国民のいろいろの不満がメタンガスのように溜っているのかも知れない。
遅かれ早かれ民主化へと体制の転換が必要なことは明らかであるなら、暴動による流血の惨事が出来るだけないようにして実現できないだろうか、と思っている。