日本の財政状況について心配しないものはいない。とにかく1年の税収よりも国債発行高の方が大きいという現象を放置しておいていいとは言えない。であるからといつて、急速に財政収支の赤字を減らすために増税をするとか、極端な財源カットを図るか、ということも無理である。どうすればいいのか、である。

 私は、かねがね、先ず景気対策が先であって、景気を良くする、企業の売上げが増える、税収が増える、という形でなければならない、そして、そのためには批判はあっても公共投資を拡充する、予算の歳出を増やす、ことに財投資を画期的に増やす、といったような、ともかく、財政によって景気の回復を図ることが先だ、と言い続けて来ている。

 増税や歳出カットを先行させたら、経済は更に萎縮して、いわば縮小再生産の形をとらざるをえなくなる。これは最も望ましくない方途である、と考えている。

 そして、長い眼でみて、最大の問題は少子化現象である。いくら努力をしても、世界で1番高年齢化の進んでいる日本で、確実に増大する社会保障費を支えている若い人達

が絶対数でも人口に占める割合でも低下の一途を辿っているのでは、若い人達の負担は増えざるをえない。

 何と言っても、このままでは子供を持ったら一層生活が苦しくなるだろう、と予測をすれば、子供を産むことを躊躇する人が増大しても仕方がないではないか。

 数字を見れば一目でわかることだけれど、かつての私の選挙区鳥取県で、Aという広島県との県境の中国山脈に近い町では、35年の間に18000人という人口が7000人以下となった。農業で暮らしていたが、年老いた両親の片方が欠けると、都市部に住む息子がこれを引きとるという形で、人一人住まない空家屋が増えて廃虚となって行く。過疎対策としていろいろなことをやっても焼け石に水の観である。

 こうなれば、効果の乏しい過疎対策は諦めて、地方の中核となる小都市に二次、三次産業の有力企業を手を盡して招き入れ、地域の活性化を図ることに力を入れるしかない。そして就業人口の激減した農地は農地法などの改正によって所有、賃借について流動化を思い切って促進し、機械化による大規模農業を企業の責任と創意によって実行して貰うしか、他に方法はない。

 戦後GHQの指令によってなしとげられた農地解放は画期的な自作農の創設、維持を招来したが、もう充分役割りを果したので、ノスタルジックな思いはあるものの、こゝは踏みきつて農業改革に取り組まなければならない。

 できるか、制度は人間の作るものである。できない訳はない、と思う。