今朝(12日)の新聞各紙は殆ど一面トップにエジプトのデモについて記事を載せている。各紙のムバラク大統領についての記事は多少異なっている。ムバラク氏が即刻辞意を表明するという記事もあれば、近く表明するという記事もあり、カイロを脱出して、保養地へ行くという記事もある。

 多分、現地は大混乱で、各紙の特派員も走り回っているのだろうが、必ずしも事態の正確な把握ができていない。というよりも、事態が短時間の間に刻々変化しているし、どこが事實なのか、わからないのだろうと思う。

 ムバラクはデモがそこまで拡大して行くとは思っていなかったではないか。それが、デモは沈静化するどころか、拡大する一方、頼みの軍も傍観的というが、むしろデモに理解を示すようになっては、も早やこれまでと諦めざるをえなかったのであろう。

 首都カイロなど各地で11日行われたデモが百万人と言われ、大統領は同日軍用機で国内保養地シャルムエルシェイクへ移動したという記事もあった。

 昔と違って今はテレビその他眼で見る動画で居ながらにして世界の動きがわかる。エジプトの民衆のあの大波のようなデモの姿を見れば、ムバラクも観念せざるをえなかったのだろう。

 フランス革命の際のパリ・コンミューンもああいう姿ではなかったかと思った。「大廈の顚れんとするは一木の支える所にあらず」という。正にそれである。

 さて、そのあとはどうなるか、である。デモを動かしているもとは勿論あるだろうが、纒ってムバラク政権の後を引き継ぐのは誰か、どのグループか、ということは決っていないのではないか。多分、軍の発言が大きいと思うが、といって、軍の誰がとなると、決っていないだろう。そこの混乱がまず心配される。

 対岸の火事と見てはならない。エジプトはアラブのリーダーであるだけに、その国の動向はいろいろな意味で世界の政治に影響を与える。

 それにしても30年続いたムバラクの政権がかくも短時日の間に倒れるのを見れば、同じように長期政権の続く中東その他各国への波紋は小さくあるまいと思う。いずれ、世界は民主化の一層の進展に向かっているとしたら、これも一つ流れとみるのであろうか。