ファドはポルトガルの歌である。私は衆議院議員の時、日本との交易の歴史の最も古いポルトガルの間に議員連盟がないのに気づき、音頭をとって作ることになり、推されて会長となった。
二度ほど家内や息子と一緒に訪ねたが、長い歴史の支えた文化の重みを感じさせる風物がすっかり気に入り、息子もこういうところに住みたい、と言い出すくらいであった。
それはともあれ、ファドという昔から唱い継がれている歌が気に入った。しんみりと時に哀調さえ帯びた、日本で言うなら河東節か一中節のような歌である。それをよくする歌手にマリオ・モリタという青年がいて親しくなり、リスボンの家も訪ね、両親にも会った。ビリヤードも置いてある立派な家でご馳走になった。彼がピアノで弾き語りするファドは素晴らしかった。私は乞われるままに彼の名前を日本語で盛田万里夫と書いてあげた。彼はそれがとても気に入って、CDのケースにもそれを書いていた。
彼が来日した際、演奏会を開いた。日本にもファドを唱う人がいるが、もっと多くの人に聴いて貰いたいと思っている。