もう万年筆など使う人は稀になったようだが、私は今もって万年筆である。この頃はパソコンで打つのが普通になっているし、上手な人はゆっくりしゃべる言葉であればそのまま打てるぐらいのスピードである。

 戦後大蔵省に復帰した時、GHQの時代であって、あらゆる文書を英文に直して届けることになっていたので、毎晩夜業をしてタイピストから手ほどをして貰って英文タイプを打つ練習を重ね、まぁ何とかキーを見ないでも打てるようになったが、GHQもいなくなったので、内政派で育った私は英文タイプを打つ機会もないままになった。

 ワープロも買って来ていくらか練習したが、余り上達はしないままに、相変わらず原稿は万年筆を書いている。ボールペンも使うし、たまには鉛筆も用いるが稀である。それで、万年筆だけは、外国へ行く度に買い込んだし、日本でも万年筆博士の作品といったようなものも買っているので、2、30本は手元にあるが、やはり外国の有名品が良くできている。最も大体が横文字を書くように作られているので、和文を書くには適しないものもある。

 ペン先の太さ、堅さ、軸の握り具合、重さなどいろいろあるが、私はウォーターマンかデュポンの万年筆が一番使い易いような気がする。シェーファー、モンブランも良い。

 そして、用紙にはコクヨの200字詰10行の縦書きのものを使っているが、この頃こういう原稿用紙を売っていなくなった。文房具屋にもないところがあるので、外を歩いて見つかり次第そこにあるもの全部を買うことにしているが、せいぜい10冊ぐらいしか置いていない。いつか、コクヨと看板を出している店を見かけたので、車をとめて入って尋ねたら、もうこういう紙のものは売れないので店仕舞しようと思っているという主人の言葉。あるだけ買ったが20冊もなかった。

 コクヨの会社に電話をして100冊纏めて買ったので、当分安心して原稿用紙を使える。それでも半年余りで40冊は使ってしまった。原稿のほか、日記をそれで書くことにしているが、これが結構枚数を食っている。

22・10・16