初の国産小型ジェット旅客機「ミツビシ・リージョナル・ジェット(MRJ)」の生産が9月30日に始まった。昭和49年に生産中止となったプロペラ旅客機YS‐11以来の国産旅客機事業である。

 YS‐11はかつて名軍用機ゼロ戦などを設計した旧軍関係の技術者達が設計した。なかなか優れた航空機といわれたが、ロールス・ロイスのエンジンを積んでいるということで売り出したものの、販売が伸びず、開発費の回収もできないうちに大赤字を出してしまった。182機を生産し、更に20機の追加を認めて貰いたいと通産省当局から要請があったが、当時主計局次長の私は反対した。1機売るごとに3億円の赤字となるような事業の継続は財政面から認められない、という趣旨であった。その後たしか400億円にのぼる赤字の大部分を政府が尻拭いせざるをえなかったのである。

 今回は100席以下の小型ジェット機で、今後20年で需要があると見込まれる5千機のうち1千機の受注を目指すという。開発費1800億円のうち約500億円を国が支援する方向だと言う。

 次世代産業として航空機の製造は技術に生きる日本として最もふさわしい成長産業であると思われるだけに、この事業の成功を祈るや切である。

 これだけ製造技術の優れている日本が航空機産業において何故力を発揮できなかったのか、は1つの問題点であるが、私は、大型航空機の製造に重点をおいていた米国政府が日本の航空機産業の成長を好まなかったことも原因と言われている。

 もし、そんなことが事実であるにしても、今後は、遠慮している場合ではないので、政府もこの小型ジェット機の生産をバックアップして貰いたい。技術力の低い製造業部面はどんどん安い労働力を持つ後進国に追い上げられているのだから、正に航空機産業に活路を見出すべきものと思っている。


22・10・12