財務省は、自宅などで少人数の子どもを預かる「保育ママ」を支援するため、全国に約1万戸あるという国家公務員宿舎の空き部屋を割安な家賃で貸し出すことにしたという。ただで空かしておくより国の財政にとってもいいし、又、足りないと言われている保育所を増やすことにもなって賛成である。
国家公務員に宿舎は本当に要るのか、という議論は今もあるし、又、家賃が安すぎるではないかという批判もある。
私もかけ出しの課長補佐の時代から本省の局次長になるまでの約20年間公務員宿舎に世話になっていた。この間転勤すること4回、宿舎は7回変った。地方勤務が非常に少なく殆んど本省勤務だったので、転宅は少ない方である。
国家公務員、とくに税務関係、警察関係、検事、裁判官という法務関係などのものは、昔から赴任先の住民との癒着を怖れてか、同じ任地に長居させず、せいぜい2、3年に留めるといったような方針があって、転勤が多かったので、その都度宿舎を自分で手当てするのも大へんだということで、公務員宿舎は必要とされていた。
この点は、地方公務員のようにおおむね自宅から通勤範囲内を異動しているものとの違いがある。現に地方公務員は知事などごく一部の幹部の職員の宿舎があるのに過ぎない。
国家公務員は命令一下一週間かそこらで家財道具もそこそこに纏めて転勤をしなければならない場合も少なくなく、公務員宿舎があれば助かることは事実である。
家賃が一般的に安いではないか、という批判は承知している。しかし、以前から国家公務員とくに転勤の多い幹部職員の給与は民間の仲間(例えば同じ年に大学を出た)の給与に比べれば著しく低かったし、せめて家賃ぐらいいくらか安くしてあげようではないか、という配慮があった、と思っている。
国家公務員でも府県内ぐらいで異動している人は自宅を持っている人が少なくない。現に私が役所に勤務している頃、自宅を持っているのは滅多に異動しない係長組以下であり、自宅を持たないのが課長クラス以上という現象があった。
もっとも、逆に公務員宿舎がついて回るから自分の家を持たなくてもいい、あるいは、持っても仕方がないと思っている人もかなりいた。
以前と違って、自分の家を持っている公務員が増えたし、又、宿舎の整備が進んで来て、現状では空き家も多くなって来たという。それなら、宿舎を纏めて空き棟を作り、売却してもよいし、又、今回の保育ママに貸すような措置も宜敷いと思う。とにかく、ムダに空けておく必要がないことは勿論である。
22・9・1