7月16日の読売新聞(夕刊)を見ていたら「語源ハンターわぐりたかし(放送作家)」という見出しで、「べっぴん」の語源について次のような記事があった。面白いので紹介する。

 明治の雑誌「風俗画報」に出ていたのであるが、東海道吉田宿にあった「織清という割烹店の主人が、新メニューの鰻を宣伝する際、友人のアドバイスで「(するぶる)別品(べっぴん)とだけ看板に掲げて大評判となり、江戸までその名をとどろかせた。極上で別格の品を意味する造語「別品」は、次第に鰻に限らず用いられるようになり、やがて美人を形容する言葉になったというのだ。「別嬪」は当て字だ。

 織清の流れをくむ「丸よ」を訪れると、女将が貴重な資料をあれこれ見せてくれた。すると大発見。古い日記に、常連だった画家、渡辺小崋(崋山の次男)が「別品」の名付け親だと記されていた!

 ちなみに「丸よ」の鰻丼は、織清式に焼いた皮面を上にして出している。蒸し、焼き、照り、そして食感が別品で旨いっ。」

 それで、辞書には「べっぴん」について、どう記されているかということになった。

 「日本国語大辞典」(小学館)には、いろいろ書いてあるが、抜き書きするとある。

 べっぴん【別品・別嬪】〔名〕➀(別品)特別にすぐれた品。器量人。別品。(中略)➁美しい女性。美人。器量よし。(中略)

 「大辞林」(三省堂)には簡単な説明。

 「別品」➀別の品物。また特別により品物。➁「別嬪に同じ。」「別嬪。非常に美しい女。美人。別品」

 ついでにつけ加えておくと、私達が若い頃教えられ、唱っていた歌に。

 「こんな別品見たことない、とか、何とかおしやって、その手は桑名の焼蛤もよ・・・・。」

「桑名の焼蛤」に特別な意味はなく、「その手はくわない」という意味のだじゃれに過ぎないようだ。

 しかし、何となく気になったので、桑名について辞書(上記日本国語大辞典)を見てみると、「桑名」㊀略 「㊁(名)女陰をいう。」「雑俳柳多留」に「湯屋の羽目岐阜と桑名の国境」とある。判じもののようで、よくわからなかったので、念の為、「岐阜」の項を見たら、その㊁名に「ぎふぢょうちん(岐阜提灯)の略」とあり、岐阜提灯に同じとなっている。

 そこで「岐阜提灯」を見ると、➀は文字どおり有名な提灯についての説明であるが、転して②は、「老人の男陰をしゃれていう。江戸時代の俗語。小田原提灯。ぎふ。」と記されていた。

 そこで、川柳の意味がわかった。つまり、湯屋の羽目板は男湯と女湯を仕切っている、という当たり前のことであった。

 昔は、とくにこういう言葉の遊びが多かったようである。江戸三百年の大平の副産物であろうか。


                                         22・7・18