私の記憶では、ご当地ラーメンは札幌ラーメンに始まると思っている。昭和30年代に札幌に出張した私は、道庁の人の案内ですすき野のはずれにあるラーメン街に案内された。よしず張りの、露店に毛のはえたようなラーメン店が10軒ほど並んでいた。確かにそこのラーメンはうまかった。

 札幌ラーメンの名が広まった頃、鹿児島に出張した私は、今度は鹿児島ラーメン店に案内された。そこはうまかったが、と言って格別な味ではなかったように思う。

 その頃から各地でご当地ラーメンの続出である。おいしいというところ日本中のラーメン店を食べ歩く物好きもいると聞く。

 私がラーメンを始めて知ったのは横浜の中華街である。横浜で小中学校を過ごした私は、南京町(中華街をそう呼んでいた)でラーメンを食べるのは楽しみであった。

 進学した一高にはラーメン店があったので、その頃が一番ラーメンに親しんだのではないか。一杯12、3銭だったと思う。

 私は、戦争中中国にいた。漢口の街のラーメンの屋台は随分なじみになった。どんぶりにちょいちょいちょいと塩やら何やら7、8種類のものを投げ込んで、湯にとかし、メンを入れて、ホイ一丁上がりといった土合だったが、これが何とも言えずうまいのである。もっとも大てい大酒を飲んだあとであったから、汁気のものは、何でもうまく感じたのかもしれない。

 この頃うまいといわれるラーメンの店に晝ともなれば、2、30人も行列しているところを見る。せっかちな私は待つのが大嫌いだから、そういう店には行かないが、まぁうまいんでしょうな。


                                22・6・13