七月二十四日の各紙にシベリアなど旧ソ連に抑留された人の資料延べ約七〇万人がモスクワのロシア国立軍事図書館に保存されていることが分かったと報じている。実は、これは昨年九月、私が全国戦後強制抑留者協会(略して全抑協)の会長としてモスクワに出張した折にロシア側から示されたものである。
厚労省の資料によれば、旧ソ連抑留者の総数は約五六万人(うち死亡者約五万三千人)となっており、平成三年ゴルバチョフが来日した折持参した死亡者の名簿約三万人に、その後、再三にわたるロシア側への要請により追加されたものを含めて、死亡者について言えば、四万一千人で、今なお一万数千人の死亡者についてはハッキリしない。
ゴルバチョフが来日した時、締結されたソ連抑留者に関する協定によれば、ソ連は(そして今はロシア他十数カ国)この協定を履行する責を負っているに拘らず、充分に履行できないので、毎年のように彼の地を訪ねて強く要請しているのに、今なお、協定が完全には実施されていないのである。
今年も訪ロし、名簿や他の問題についても、平成三年の協定を完全に実施することを要請するつもりである。
ただ、この度の七0万人分の資料については、どうも内部チェックが不充分な面もあって重複もかなりあるのではないか思っているので、これを省けば、実数はかなり大幅に減るのではないか、と思う。先方にも自信はないようで、要するに手間賃を呉れればやりますといういつもの返事であった。大使館を通じて厚労省には連絡をしておいたのが、この資料である。全体がカード式。紙質が悪い上、五〇年以上も経っているので、保存状態は悪い。抑留者はあちこち収容所を替わるたびに一から調書をとられているので、それを集合したこのカードのなかには、かなり重複が多いと思うと、先方の図書館の責任者が言っていた。ともあれ、このカードのコピーも貰うことにしている。
抑留者の記録については、既に先方の持っていた各人別ファイルを私ども団体代表が十年以上も前、この軍事図書館を訪ねた時初めて判明をしたので、予算措置をし、マイクロフィルムでコピーをとったのである。必要な方は厚労省の社会・援護局業務課調査資料室へ請求してくれれば貰えることになっているし、料金を払ってくれれば、翻訳したものを貰えるようになっている。(21・7・26)