体調を崩していると伝えられている北朝鮮の金正日総書記の後継が誰になるのか、かなり前からいろいろな説が横行していたが、どうも三男の正雲氏を後継者に指名した、と朝鮮労働党幹部が中国共産党幹部に伝達していたことがわかったという(六月三日、朝日・朝)。

 誰が後継者になろうと大差はないようにも思えるし、他国のことでそれほど気にもしていなかったが、このところ弾道ミサイルを飛ばすやら、核の地で爆発をするやら、六ヶ国も蔑ろにするような北朝鮮の行動を耳にするにつけて、やはり、一番近くにあり、この間の行動に無関心ではいられなくなっているので、当然後継者は誰になるかについても気にせざるをえなくなっている。

 とは言うものの、言われている三人がどのような人なのか、どういうふうに考え方が違うのかなどは、さっぱりわからない。新聞の報道を見て、ああそうかと思うしかない。

 それにしても、困った存在になったものだと思う終戦の北朝鮮は咸鏡南道の咸興の軍司令部で迎え、十月末までその辺の収容所で暮した私は、地下資源に恵まれているかも知れないが、リンゴの他に余り食いものもないような、山に木もろくに生えていないような土地で暮すのは大へんだな、と思っていた。

 社会主義の国が経済的に破綻したことは七十年のソ連邦が示してくれたところであるのに、北朝鮮が旧態依然として旧い体制を維持しているのは現代の不思議と思わざるをえない。

 食うや食わずで軍備に血道を上げているとしか見えない国の国民は本当に不幸であると思うのだが、そのことを国民の大半は気ずいていないように思えることも気の毒であるが、陸軍の初等兵を体験した私には、わからないでもない。というのは、軍隊のような異常な環境の中にあっては、思考の自由を失い、行動の価値判断などはなくなり、ただ上からの命令のままに肉体を動かすというような状態になるものであることを知った。あの状態に国民が陥っているのではないか。何事も将軍様の指示、命令が金科玉条となり、その意のままに喜びする覚えるようになっているのではないか、と思う。

 東独の崩壊は西独のテレビから流れる市民の生活の実態を知ることから始まったと言われているが、多分今でも北朝鮮の人民は隣国の人達がどのような暮しをしているか、も知らせれないようになっているのか、と思う。

 そして、時々見られる北朝鮮のあの軍隊の切迫だけではなく、本当に一糸乱れぬ若い女性たちのマスゲーム。怖くなるほどの行動の統制を実感できる。ああ、あれでいいのだろうか、と他国の人間である私達が言うことも余計なことなのだろうか。

(2009.6.6)