五月九日森光子放浪記二千回を帝国劇場で観た。一つの劇を主役で二千回も演じたことはギネスブックものということであったが、八十九才、私と現在同い年の森光子が出ずっぱりの主役を見事に演じたことには感動した。
何十分にもわたる異例のカーテンコールで涙ながらにお祝いを述べる人達の詞にもお義理でない賞賛の心が表われていた。
昭和三十年代の終り頃芸術場で初めて観た時から何と三十数年経っている。その時の光子の姿がダブって出てくるような思いがした。
放浪記が私のすべてですと『女優 森光子 大正・昭和・平成 八十八年激動の軌跡』には書かれているが、林芙美子にも放浪記がすべてと言ったら失礼だろうか。
(2009.5.11)