この連休中、珍しく喉を痛めて二日程休んだ。

 中村真一郎著『死という未知なもの』を読む。沢山のエッセイ(一〇六編)を纏めたもの(六冊目)である。

 私が旧制一高に入った時の三年生で小島信夫、川俣晃自などが、二年生には加藤周一がいて校友会雑誌に小説や詩などを発表していた。

 当時、小説にのめり込んでいた私は、やがて読むだけでは物足りなくなって、私が編輯長をしていた寮の新聞「向陸時報」や校友会雑誌に短篇を発表するようになった。先般芥川・久米時代からも含めて一高校友会雑誌全部のCD版が出され、私も三篇についての著作料を貰った。読み返して羞かしくなるような作品と思わざるをえないが、十代の記念としてはただ懐かしい。

 戦後、全く別の道を歩いた私は中村先輩との接触もなかったが、十年前くらいから時々軽井沢でお会いする折があって、水上勉さんなど共通の友人もあり、会話も楽しんだが、先年亡くなられた後、未亡人佐岐えりぬさんから贈られたのがこのエッセイ集である。

 

 私の家内(司葉子)が芸能界に入るきっかけとなった最初の映画『君死にたもうことなかれ』のシナリオの作者は中村真一郎とのことを聞き、世の中は狭いな、と思うことしきり。