「台湾有事が起きる」
日本では何年もの間、そう言われ続けてきた。
自衛隊は南西諸島の防衛を強化し、離島への上陸・奪還訓練を繰り返す。
国民の目は台湾、尖閣、沖縄へ向けられていた。
しかし――
2028年、日本が実際に上陸作戦を行った場所は「南」ではなかった。
北だった。
北方領土である。
振り返ってみれば、日本が長年続けてきた島嶼防衛・上陸訓練は、台湾有事だけを想定したものではなかったのかもしれない。
国民には南を見せながら、国家は北のシナリオを準備していた。
そう考えると、見えてくる景色はまったく違う。
北方領土は単なる「島」ではない。
漁業資源、周辺海域、オホーツク海、そして北海道から北太平洋へ続く地政学上の重要地点でもある。
資源の多くを海外に依存する日本にとって、領土と海洋権益は国家安全保障そのものだ。
そして何より、日本政府は一貫して北方四島を日本固有の領土だと主張してきた。
だから日本側から見れば、これは「新しい領土を奪う戦争」ではない。
「失った領土を取り戻す」という論理になる。
2028年の北方領土上陸。
あれは突然始まった作戦だったのか。
それとも――
台湾有事が叫ばれていた時代から、すでに国家の選択肢の一つとして準備されていたのか。
今、改めて考えさせられる。
政治とは、国民が見ている方向と、国家が本当に準備している方向が、必ずしも同じとは限らない。
南を見ていた日本人の背後で、歴史は北から動き始めていた。