極限修行中は言葉を発する者はいない。
道場には修行者達の呼吸音が響くのみである。
祭壇の上には麻原が椅子に座っており、幹部たちに何やら指示を与えているようだ。
そして、何かの用事で石井も席を離れ、麻原一人だけが残されていた。
静かな時間が流れて、しばらく経った頃。
何か聞こえる。
祭壇の方から、かすかに聞こえる。
聞くとはなしに聞いていると、麻原が何かひとりでぶつぶつ呟いている。
すすめ、すすめ、・・・
その後が聞き取りづらい。
まるで、歌でも歌っているようだった。
何度か聞いているうちに、だんだんとその言葉が分かるようになってきた。
「進め、進め、修行よすすめ。」
「進め、進め、修行よすすめ。」
と2回繰り返した後に、聞き取れないマントラが続く。
何とも言えない不思議な感覚。
一方で死ぬ気で修行をさせ、もう片方では優しく歌を歌う。
矛盾する二つの行動。
しかし、これが、麻原彰晃というものなのだろうと思う。