カキーン、カキーン、カコーン。
配管の中を高温のスチームが通過する音が、煌々と明かりの灯るプレハブの建屋内にこだましていた。
あれは深夜1時か2時頃だったと思う。
CBIのサマナが誰もいなくなった後、巨大プラントはついに稼動を開始した。
通路を挟んで左側に配置されていた巨大タンクは、スチームの専用タンクだった。
そのスチーム専用タンクから、配管を通して右側のタンクへとスチームが送り込まれていく。
総量40トンの巨大圧力鍋、それが村井の構想だった。
梯子を上った村井はタンクの上に取り付けられた圧力計を睨みつけていた。
その横には温度計もある。
左側のタンクでは、広瀬がスチームのバルブを調整していた。
僕はこのふたりから離れたところで、タンクの壁に取り付けられた温度計を見ていた。
温度計の目盛りは92度から93度あたりを指している。
タンク内の配管がどうなっているのかは分からないが、タンク全体が均一に熱せられているのなら滅菌には十分な温度だった。
梯子の上にいる村井から広瀬に指示が飛ぶ。
指示はバルブの目盛りをいくつ開け閉めするのかで行われた。
「ふたつ開けて。」
「ひとつ閉めて。」
「ひとつ開けて。」
どういう基準で指示を出しているのかは分からないが、どうやら圧力が上がり過ぎないようにしながら高温を保っているように見えた。
30分ほど経過した頃だろうか。
「よし、終わりや。バルブ全部閉めてくれ。」
村井はそう言って満足そうに頷いた。