平成30年(2018年)

平和記念式典における

広島県湯崎知事による

あいさつ全文



                          みたま

原爆犠牲者の御霊に

広島県民を代表して

謹んで哀悼の誠を捧げます


と ともに 今なお後遺症で

苦しんでおられる被爆者

ご遺族の方々に 心から

お見舞い申し上げます。


草木も生えないと言われた

被爆75年をあと2年後に控え

私たちは今大きな波に

さらされています。


一筋の光明は、

広島と長崎で

我々がくぐり抜けた

筆舌に尽くし難い

非人道的な経験が、


本当は口にしたくもない

被爆者の長年に渡る

証言によって

多くの国に共有され、


核兵器の非人道性に

軸足を置いた核兵器禁止条約

国際的に合意されたことです。



他方、世界では各地で

国際的緊張が高まり、


核兵器国は競って

核兵器の更新や能力向上、

さらには「使える核兵器

の開発にまで進もうとしています。


これは、いまだに

核兵器国を中心とする国々が、

核抑止力による力の均衡を

信じているからです。


 では、

核抑止力の本質は何か。


簡単に子供に説明するとすれば

このようなものでは

ないでしょうか。


 「いいかい、

うちとお隣さんは

仲が悪いけど、

もし何かあれば、

お隣のご一家全員を

家ごと吹き飛ばす爆弾が

仕掛けてあって、

そのボタンはいつでも

押せるようになってるし、

お隣さんもうちを

吹き飛ばす爆弾を

仕掛けてある。


一家全滅はお互い いやだろ?


だからお隣さんは

うちに手を出すことは

しないし、うちも

お隣に失礼はしない。

決して大げんかには

ならないんだ。


爆弾は多分誤作動しないし、

誤ってボタンを

押すこともないと思う。


だからお前は安心して

暮らしていればいいんだよ」


一体どれだけの大人が

本気で子供たちに

このような説明を

できるというのでしょうか。


 良き大人がするべきは、

お隣が確実に吹き飛ぶよう

爆弾に工夫をこらすこと

ではなく、


爆弾はなくても

お隣と大げんかしない

ようにするには

どうすればよいか考え、 

それを実行すること

ではないでしょうか。


私たちは、二度も実際に

一家を吹き飛ばされ、

そして今なおそのために

傷ついた多くの人々を抱える

唯一の国民として、

核抑止のくびきを乗り越え、


新たな安全保障の在り方を

構築するため、

世界の叡智を

集めていくべきです。


NPT核不拡散条約

運用検討会議も開催される 

2年後の被爆75年に向けて、

今こそ世界に向けて立ち上がり

行動する時です。


 私たちの、そして

世界中の子供たちに、

本当の安心をもたらしてやる

ために全力を尽くすことが、


我々日本の大人たちの

道徳的責任だと

確信いたします。



結びに、広島県としても、

将来の世代のために

核兵器を廃絶し、


誰もが幸せで豊かに

暮らせる平和な世界を

残すことができるよう、


世界の皆様と

行動していくとともに、


高齢化が進む国内外の

被爆者援護の更なる充実に


全力を尽くすことを

改めてここに誓い、

平和へのメッセージ

といたします。


 平成30年 8月6日

広島県知事 湯崎英彦

広島県 湯崎知事

広島市 松井市長



湯崎英彦知事のスピーチによる
例え話が非常にわかりやすくて
秀逸だと話題になっています。

〝では,核抑止力の本質は何か。簡単に子供に説明するとすれば,このようなものではないでしょうか。
 「いいかい,うちとお隣さんは仲が悪いけど,もし何かあれば,お隣のご一家全員を家ごと吹き飛ばす爆弾が仕掛けてあって,そのボタンはいつでも押せるようになってるし,お隣さんもうちを吹き飛ばす爆弾を仕掛けてある。一家全滅はお互い,いやだろ。だからお隣さんはうちに手を出すことはしないし,うちもお隣に失礼はしない。決して大喧嘩にはならないんだ。爆弾は多分誤作動しないし,誤ってボタンを押すこともないと思う。だからお前は安心して暮らしていればいいんだよ。」
一体どれだけの大人が本気で子供たちにこのような説明をできるというのでしょうか。〟


ちなみに、以下は
広島市の松井一美市長による
平和宣言一部抜粋です。


「核抑止や核の傘という考え方は、核兵器の破壊力を誇示し、相手国に恐怖を与えることによって世界の秩序を維持しようとするものであり、長期にわたる世界の安全を保障するには、極めて不安定で危険極まりないものです。為政者は、このことを心に刻んだ上で、NPT(核不拡散条約)に義務づけられた核軍縮を誠実に履行し、さらに、核兵器禁止条約を核兵器のない世界への一里塚とするための取組を進めていただきたい」