【 プロロングド・エクスポージャー】

①  延長から露出へ



人がトラウマな悲劇を経験して
心が病んでしまった様な場合は、
プロロングド・エクスポージャー
という治療の試みがなされます。

なかなか聞き慣れない
複雑な英単語なので、

日本語に訳してみると
意味も理解できます。





プロロングドは「引き延ばされた」

「延長された」という意味になり、

エクスポージャーの方は「露出」
という意味になっております。


過去に経験した大変な悲劇や
つらく苦しい精神的な衝撃を
現在の自分に延長させて考え、
しかも露わに表現するのです。





つまりプロロングド・
エクスポージャーとは、

「あえてその時のことを
振り返ってみる治療法」

「過去の悲劇を忘れたいのに
記憶から消し去れないでいる
トラウマを見つめ直す治療」

ということを意味しています。





「自分の経験した悲惨な体験を

人に語って振り返ること」が、

プロロングド・エクスポージャー
という名前の治療法なのです。



自分で過去を振り返ることで、
心は癒され、平安を取り戻し、

悲惨な体験から離れることが
できるといわれています。







つらい過去を忘れるためにも、
一度はその体験を思い出して
向き合う作業が必要な場合も
時としてはあるということです。

心の悩みのカウンセリングで、
過去の悲劇的な体験を話すと

スッキリして落ち着くのは、
頭の中が整理されるからです。





現実に起きた事実を認めず、
無かったものとして忘れても
気持ちが落ち着くことはなく、
かえって記憶に縛られます。



自分自身が過去を振り返るだけで
心の癒しが自然にあるのではなく、
自分の人生と本質的に向き合って
過去と現在の区別がつくからです。





自分の人生の本質に向き合うのは、
人間にはどうしても必要なことです。
しかし悲劇的な衝撃体験をした人は
自分の心が現実から孤立しています。

尊く貴重で神聖な
自分自身の生命が
危険にさらされて
愛も失われました





差し迫る死というものほど、
人にその心を見つめ直させ、
命の本質に向かおうと努力
させるものはありません。

封印したい恐怖や嫌悪感を
再び具体的に客観視したり、
信頼が出来る人に共感して
もらうのは癒しになります。





時間の流れを過去のまま
止めてしまって、孤独に
自分だけの世界にこもる
ことから解放されるのです。

現在に生きる私たち人間は
いつまでも同じ時の流れに
止まっていては新しい命を
守る妨げになりかねません。







過去を忘れるためにも、
一度その体験を思い出し、

向き合う作業が必要です。
封印を解き放つ勇気です。

「命は愛から生まれている」
ということの表れであり、
「人は愛により強くなれる」
ということにほかなりません。




人は人の愛によって、

衝撃体験から離れ去る
ことができるものです。
過去を脱出するのです。


そういう人の心の働きを、
学術理論や経験的な感覚
だけで全て理解して対応
するのは難しいでしょう。





世の中にはプロロングド・
エクスポージャー治療法
について専門的な研究が
色々とあることでしょう。

心的外傷の原因となった
『過去の衝撃的な出来事』
繰り返し想起して言語化
するだけではありません。




人の心はトラウマによって
『無力感』と『恐怖感』を
沢山抱え込んでいますが、
増幅する危険もあります。

『自己嫌悪』や『他者否定』
『将来悲観』や『強迫妄想』
を引き起こす可能性があり、
悪化しないとも限りません。





自分自身を嫌悪したり
他者の心も認められず、
将来に絶望してしまう。
認識を歪曲するのです。

トラウマがあると人は、
正常な判断が出来ずに
現実も受け入れられず、
自分の世界にこもります。





精神的ひきこもりにより
うつ病を招く危険もあり、
普通に見えていたとしても
病を抱える人は多くいます。

「認知療法的アプローチ」で
肯定的認知傾向にまで修正
出来るなら、それほどまでは、
大事に至ることはないでしょう。