封印された宝石


第四話


星空のティータイムパーティー






『ほしぞら・うちゅう・だいがく・びょういん』


実際に声に出して発音してみると、明らかに自分が遠いところに来てしまっているということに気がつく。


なんてことだ。


もっと明るくなろう。


心をもっとハッピーな気持ちにして、ラッキーを引き寄せるんだ。無理にでも笑顔になって見せて、安らかな心を演じてみせるんだ。


今までみたいに。



今からティーパーティーにでも出席するつもりで。今日僕はそのゲストなんだ。




駅を出て病院建物に向かうと、まだ満天の美しい星空に出迎えられている。

プラネタリウムなんてなまやさしいものじゃなくって、本当に星空の宇宙を突き進み旅をしてきている感覚になってしまう。


そんな大したことしているつもりなんてないのに。






キャンパスを通り抜けて、建物の中にたどり着くと、やっと人影が見えてきた。


玄関ロビーには、思っていた以上にたくさんの人がいて、本当に病院として機能していることがわかった。

中に入ると屋内が本当にあたたかいので、心も体もほっとする。

外にいる間はそんなに寒さを感じていなかったのに。







長い時間待たされることもなく、すみやかに用件だけをすませ、早く帰りたい。


都合良く物事がすすめられると心から信じて疑わないことは、引き寄せの法則を学びはじめてからいつしか習慣化されてきている。


何もかもうまくいくにちがいない。



ただ、今の状況に少し、不自然さを覚えてきている。


大雪のち星空、そしてその時間帯にふつうに機能している病院は、駅のホームが敷地内に隣接されている。


長い間の列車の旅路によって、気力も体力もかなり消耗してきている。





おとぎ話の北風と太陽なら、そろそろ太陽さんにあたためてもらわないと。





大学病院というくらいなら、真正面から受け付けを通して案内されるのなんか待っていた日には普通、長い時間の身柄拘束が待っているというのがオチだな。






そうはいかない。

早く帰りたい。

早く帰ってホワイトダイヤモンドと一緒にまた、ブログ記事を更新したい。


そのことばかり考えていて、肝心かなめな、事の重大さというものに、あまり気をとめていなかったかもしれないのだが。



喪失と回復。

破壊と再生。

出会いとわかれ、


そしてさらなる
めぐりあい。



自分にとってはそれだけ、あまりにも突然で、あまりにも状況の変化が激しく、あまりにも心の衝撃が大きかった。



でも、人生なんてものは、いつもそういうことの連続があるのが当然。もしないとしたら、それはそれで、異常なことかもしれない。

平凡で穏やかであたりさわりがなくて、万事が無問題、すべてにおいて順風満帆だったら、人生の旅路という一大イベントは、ハッピーでラッキーで、ほほえましいものだと言えるのだろうか。


少なくとも、それで心に平安があると言えるのか。






待つことを覚悟をするより、新たな好ましい展開を期待することにより、徐々に心の平安が取り戻される。






紹介状を受け付け窓口に見せ、自分の状況説明をする。あとはティータイムの始まるまでワクワクドキドキしながら心の準備をする。

引き寄せの法則がはたらいたのか、誰よりも早くすぐに名前を呼ばれ、案内にしたがって行動をする。






さあ、どんなに素敵なストーリー展開が待ってるのか、どんなに素敵な出会いがあるのか。



お楽しみはこれからだ。


どんなに偉大な芸人さんだって、下積み修行中時代があったんだ。





結果よりも過程が大切なことだってある。


イエス・キリストにだって、下積み修行中時代には、父親のヨゼフから大工仕事を教わっただろうし、母親のマリアを喜ばせるために一生懸命にはたらいたことだろう。


あたたかい愛情でささえあえる家族は、僕にとっては理想なんだ。



さあ、一刻も早く、ティータイムパーティーの準備をしなくてはならない。





TO BE CONTINUE.......