第二話

『星空の鉄道旅行』





スパークリング・シャイニング・スターという名前の医師に書いてもらった紹介状をたよりに、さらにまた別の医師を探すことになってしまった。


汽車をいくつも乗り継ぎ、はるかかなたまでの旅路を経て、かなり遠くへと行かなければ、その医師の居る場所にはたどり着けないらしい。



どうしてこんなことになってしまったのだろうか。

いや、どうやってこれを解決していこうかと思うことが大切だとかいってたな。前向きな姿勢でことにあたれというのはよくわかる。

ただ、自分自身の問題を自分で解決しろと突然言われたことで、少しあわててしまっただけなんだよな。


次の汽車を待ちながら、先ほどから降りしきる白い雪の美しさに、僕は目をうばわれていた。



頭で色々考えてみても仕方がない。こういう場合、かえって思い悩まず楽観的に構えた方がいい。悩めば悩むほど、ドツボにはまるということもなくはないからだ。



ただ汽車を待つのもどうかと思い、駅の売店で買ったあたたかいスープを飲む。かなりな大きさの器に少しびっくりしたものの、味も香りも最高級のおもむきがただよう。夢のような心地で、身体中があたたかくなっていくのが感じられる。



頭で考えてばかりでは、五感の働きまでもが鈍くなってしまう。なぜなら頭にこそ五感を代表する器官がおもに集まっているからだ。

眼、耳、鼻、舌。
視覚、聴覚、嗅覚、味覚。


そして、触覚は身体全体で感じるとしても、頭の考えだけではなくて心の働きを活用しなくては、真の幸せをつかみとることは不可能になってしまう。



相手に対して思いやりの心がなければ、どんなに夢を叶えても、理想的な未来像を実現させても、ビジネスチャンスに成功しても、幸せ者にはなれない。


強くなければ優しさではないし、優しくなければ強い意味がない。




悲しいけどこれ、現実なのよね。




雪の寒さに負けない強さと優しさを、あたたかいスープ君に教えられていると、やがて汽車はホームに姿を現し、乗客たちは静けさのうちに乗り込んでゆく。



きれいな景色ときれいな空気、そして、何もかもおおいつつみ、汚ないものまですべてをかくしてくれるかのようだ。このような冷たい白さの中にあって、なんだかすべてが清められるみたいな感じもしてしまう。雪の力はすごいものがあると、あらためて感心する。


先ほどのあたたかいスープはもうないのだが、やさしい香りと味わい、あたたかさとやすらぎ感に、再び心からの感謝をする。



あれほどのおいしさはきっと、使ってる野菜が有機無農薬か、もしくは限りなく有機無農薬に近いかにちがいないのではなかろうか?



あるいは、調理したひとの腕前が良いのか、もしくは料理に愛情がたっぷりこもっているか、もしかしたら本当に、料理しながら蓋を開けて『愛情♪』とか言ってささやきかけてくれているのかもしれない。




ふと、僕は汽車の座席に揺られながら、いつしかトンネルの中に入っていることに気がついた。





きちんとけじめをつけないとならないんだよな。





スパークリング医師による診断では、ホワイトダイヤモンドが不在である理由は、体調不良でも心の問題でもなくて、僕自身の問題だという話だった。



本当に、おかしなことになってしまったな。



ここまで来たら、行き着く先が地の果てだろうが宇宙の果てだろうが、行くしかない。アルジェリアだろうがナイジェリアだろうが、そこでこの問題を解決するための鍵が手に入るなら、行くしかないじゃないか。

たとえアンドロメダでもイスカンダルでも、どこにでも行ってやろうジャマイカ。





本当に、おかしなことになってしまった。


だれからもツッコミを入れてもらえないのが、こんなにもむなしいのなら、不必要にボケるのはもうやめてしまおうか。






かつて、僕たちの心の中に美しく輝いていた命の輝きは、いつまでも変わらない永遠の光を放ち、いつまでも無くならない愛と喜び、しあわせとやすらぎを無限に与えてくれていたはずなのに。





今でも君が、この命の美しさに生きていることを、僕は心から願ってやまない。



僕らを乗せた汽車が

トンネルを抜ける。

そしてそこには、

星空が輝いていた。






すべてが美しく光り輝いていたんだ。



君が思っていることを、僕たちはすべて共有できているんだと、信じていた。



でもそれは、僕が勝手に、そう思ってただけだった。


君にとって、美しく光り輝く大切なものは、簡単に手に入り、簡単に消えてゆくものばかりだったのか。








汽車の窓から見える大きな看板の文字に、思わず声をあげて吹き出してしまいそうになる。

これはどういう罰ゲームなんだろうか。




『星空宇宙大学病院』





TO BE CONTINUE.......